DIABOLIK LOVERS MOONLIT NIGHT
第3章 `This encounter is.
あれから数日。
あの日以来、ルキとはまともに会っていない。
否、私が避けている様なものなのだけれど。
「───…、」
声にならない声に、溜め息が出そうになる。今の私の声は、ただの空気だ。
それ程に、私があの日に無くしたものの力は大きい。
一つは、彼…ルキへの信用。
私と彼の関係は──崩壊するまでは、ただの恋人同士だった。それなりに、愛し合っているつもりでもいた。
でも、彼は私ではなくて……イヴという存在である、人間の小森ユイを選んだから。
もう私は必要ないのだ。
一体、彼にとって私は──…
──もう一つは、例にある私の声だ。
あの日以来、ショックからなのか、声が出なくなってしまった。
この事は、少なくとも生活に支障をきたす事になる。
いつになったら、戻るのだろうか。
けれど、同時に大きなものも手に入れた。
『逆巻シュウ』
声にはならないけど、その名を口にしてみる。
逆巻シュウ。
彼は、あの出来事の後に廊下で出会った純血の吸血鬼。
あれから度々話し掛けに来てくれる彼は、私の唯一の癒しになりつつあった。私に、何か用事があるわけでもないのに。
“ただ傍にいるだけでいい”
それを訪ねた時の、彼の答え。
ただ傍にいるだけでいい。
…彼を愛していた頃の私も、夢中でただそれだけを思っていたものだ。
けれど、その愛も今では渇ききってしまった。
『……』
取り敢えず。逆巻シュウと私の関係を考えてみる。
私と彼の関係は……
ガラ…と、扉が開く音がした。私が今いるのは音楽室。
放課後になっても音楽室を利用する人物は…私が知っている中では一人しかいない。