DIABOLIK LOVERS MOONLIT NIGHT
第5章 `Halloween party.(特別企画:逆巻)
*逆巻スバル*
「…ここにいたのか?」
私に向かってそう云ったのは、彼──逆巻スバル。
『なぁに?探してくれてたの?』
「あ⁉べ、別に探してた訳じゃねーよ!ただ、気になったから…」
同じではないか。まぁ、不器用な彼の事だし、咄嗟にこういう言い方をしてしまうのだろう。
『ふーん』
「…、それより」
ふとした瞬間、気付けば彼の腕の中に包まれていた。
これでは、彼の顔も見れないし、私が紙に何かを書いて見せる事も出来ない。
少々不満だ。
だから、少しだけもがいた。けれど彼は、逆に抱き締めている腕の力を強めるのだった。
「……良いから、黙ってて聞いてくれ」
頭上から、彼の真剣な声が聞こえてきた。
そんな状況だったから私はてっきり、ちゃんとした話をするんだろうな、と思った。
だが、予想は大いに外れたのである。
「ハロウィンって、何だ?」
は?
……え?
本当に、声が出ていたのならそんな反応をしていただろう、と思う。
彼を半ば無理矢理離しながら、私は紙に答えを書き始めた。
『仮装行事。トリックオアトリートと言い合って、お菓子を貰う。持っていない人には、お仕置き』
「そうなのか…」
それから少しばかり、彼は何かを思案する様な仕草を見せた。
そして…
「トリックオアトリート」
『……ん?』
トリートオアトリート、だと?スバル、君は本気でそれを口にしているのかい?私が今お菓子を持っていないのを分かっていて?(←先程カナトに全て持っていかれた)
そう思考を巡らせながらオロオロしていると、スバルが痛い所を突いてきた。
「……まさか、持ってねぇのか?」
はいそうです。全くその通りなのです。ですからスバルさん。先程の事は全て忘れて…
「なら、お仕置き…だな」
忘れてくれないのですね!それを教えてしまった数分前の愚かな私を恨みたい。
もう、潔くなろうじゃないか。
『お仕置き、していいよ』
そう書いた紙を見せて、半ば投げやりに彼と向かい合った。
…チュ
「⁉」
「…これがお仕置きだ」
彼の赤く染まった顔を見ると、とても責める気にはなれなくて。
そのまま、自分の頬が熱を持っていくのを静かに感じているのだった。
「……足りなかったなら、もっとしてやるよ」
──可愛い彼には、多分永遠に勝てない。