DIABOLIK LOVERS MOONLIT NIGHT
第1章 `branch point.
…これで、終わりかな。
外は、いつにもまして真っ暗で、この学校の生徒はとっくに下校した頃だろう。
彼の言い付けを、破ってしまった。
あの後…帰り際に先生にプリント作業を頼まれ、早くやらなければ…と作業をし始めたのは記憶に新しい。そして、気付けばこんな時間。果たしてこれは、理由になるのかな。言い訳になってしまうだろうか。
そう思考を巡らせている時…ちらりと、窓の外の月が視界に入った。
…──嗚呼、今日は満月だ。
満月は、人ならざる者達にとって特別な日。
吸血鬼達にとってはこの日…とても強い吸血衝動に駆られる。きっと、彼も今頃は…。
停めていた足を、少しずつ進める。長い廊下に、私の足音だけが響いていた。何と空しい響きだろうか。
ガタン、という…一際大きな物音に再び歩みを停めた。
何だろう?…奥の教室から聞こえたような。確か彼処は──空き教室だ。
小さな好奇心のみで、その教室に近付いた。
…あれ?扉、開いてる……。
今思えば、それがいけなかったのかもしれない。
彼の言い付けを破ってしまった私は…もう……。
元に戻ることなんて、出来ないのだから。
「ッ、や…めて、くだ…さっ、」
「ん…、…は、」
強い吸血衝動に駆られた吸血鬼は、時にそれを抑えきれなくなる時があるという。
「っ、あ…ぁ…、」
運命とは残酷なものであり、一度回り始めた歯車が止まることはない。
が、ただ一つだけ、例外がある。
切っ掛けは本当に些細な事。小さな綻びからヒビが入った歯車は、……最後には──。
『っ、あああぁぁああ──……!』
全てが崩壊し、全てが元に戻ることはない。
一部が欠けてしまえば、回ることなんて出来なくなるのだから。
──声無き叫びが、誰かに届く筈も無く。
「っ、は…はぁ、~~~っ、!」
──雫が一滴、頬を伝うだけ。
°branch pointー分岐点ー
すれ違い始めたのは、何処だろう。
貴方はそれにさえ、気付かない。
もしかしたら、私だけが悪かったのかな?
それとも、貴方?
私と彼の関係。
そんなものは──…とっくに崩壊していた。