第1章 最終章 始まりの追憶
セラーは痛みで叫び声をあげた。酒場の客は我先にと逃げ出そうとするが、出口で詰まってしまっている。
ユラムは入り口を諦め、窓を叩き割ってセラーの元へ急ぎ駆け付けた。
しかし、黒いモヤが急激にその体積を増やし、悍ましい臭気と共に酒場全体を包み込んだ。
地獄だった。
辺りから悲鳴と血飛沫が上がり、床はすぐに血で一杯になる。
ユラムはただその光景に怯え、震える身体を抑えていた。セラーは片腕を失って尚、怯えるユラムを案じ、残された右手に剣を持って構えていた。
よく見るとモヤの中を影が飛び交っている。セラーはその影か元凶だと確信し、身構える。
影はセラーに向かって加速し、セラーは剣を影に向けた。
だが、影は突如向きを変え、ユラムに遅いかかった。
間に合わない。
反応が遅れ、左手の激痛で剣を上手く動かせずに、セラーはユラムと影の間に身体を投げ出した。