第1章 最終章 始まりの追憶
それはさらながら鬼神のような闘いぶりだった。
その孤独な闘いを見た市民は口々にそう語った。角が生えていたとまで語る者すらいた。
ユラムは魔道士数十人と使役された魔物相手に、単身斬り込んでいった。
彼はその時、全てに怒り、憎悪していた。
セラーや仲間を奪った魔道士に。
緩みきった国に。
助けを請うだけの市民に。
そして、何もできなかった自分を何よりも。
涙を流しながらユラムはひたすら斬り続ける。帰り血を浴びて真っ赤になった彼の目からは涙が流れ、剣を握る手の指は自らの力で折れてしまっていた。
魔道士は成すすべもなく斬り殺され、ユラムは全ての魔道士達を執拗に斬り続けた。
悲しきゼレムの若き悪魔
惨劇の熱帯夜に終止符を打った彼は、畏怖の念からそう呼ばれ語られるようになった。