第1章 最終章 始まりの追憶
宴は深夜になっても終わらず、3時を過ぎても皆笑いながら大声で祭りを楽しんでいた。
「ユラム。お前母親のためって、いつも肩肘張って頑張ってるのは偉いと思う。だけどな、自分を大事にしろよ。お前のこと大事に思ってくれる人がたくさんいるんだからな。」
「祭りの夜に説教かよ。分かった分かった!兄貴の言いたいことはよーく分かった!」
セラーは困ったように笑って、ユラムを見ていた。
ぎゃっ、、、
外で一瞬で途切れるような奇妙な悲鳴が聞こえた。
酒場の窓際に座っていたユラム達はそれに気づき、店の外を見やる。
「いやー!!」
酒場の外に露店を出していた男が道に倒れていた。一瞬理解が遅れたのは、男の身体が右半身と左半身で切断されていたからだった。
一気に通りは混乱に飲み込まれる。そしてこの犠牲を皮切りに、後に惨劇の熱帯夜と呼ばれる長い長い夜が始まった。
「全員剣を持て!犯人は一瞬で人間を縦に割いた!魔法か何かの力の可能性が高い!単独か複数かも分からない!注意を怠るな!」
セラーは一瞬で酔いから醒め、指揮を行う。大体の兵士は足取りもおぼつかないが、ユラムは辛うじて警戒の体制を取ることができた。
そして、酒場は静かになった。