第2章 兄貴、信じてたのに
「誰にも話さないで欲しいんだ・・・」
思わず両手の指先を合わせて上目遣いに見上げるという、私がやっても痛々しいだけの仕草にも優しく微笑んで応えてくれる。大きな手が優しく頭を撫でた。
「ああ、勿論だ。心配しないでくれ、他言はしないと誓おう。約束を破った暁にはこの背中へ剣をつk」
「いやいやいやいやそんな事しないよ!!ありがとうね!」
本当にこの、全身から滲み出る誠実さ。ちっともヘラヘラしなくて、嗚呼ますます兄貴が恨めしい。
部屋を出てジークフリートと別れ、他の人を探して彷徨いていると
視界を掠める青い影。
貴様。
T字の廊下を曲がって、恐らく仮眠室へ向かおうとしていたであろうクー・フーリンを呼び止める。
「おう、どうした!」
オウドウシタではない。その輝かんばかりの笑顔はなんだ。光の御子か。光の御子だ。
明らかに不穏な空気を醸し出している私を目の当たりにしても何一つ思い当たらない様子の彼を思い切り睨み付ける。