第2章 壱 トリップ、してしまった。
近藤勇。
あの男の人が名乗った名だ。そこで、私は思った。
どこかで聞いたことがある、と。
とはいえ、暫くのうち私の身を預かってくれるらしい近藤さん。
若干の不安を紛らわすように彼に着いていけば、辿り着いたのは…
「……新選組屯所…」
「ああ。…云ってなかったか?」
云ってません! 何この人天然なの?違う?え?え?
表には出さないが、少しばかり脳内で取り乱してしまった。落ち着け、落ち着け。
「あ…、それじゃあ近藤さんって…」
「はは…。改めて…新選組局長、近藤勇だ。宜しくな。…そういえば、まだ君の名を聴いていなかったな」
「やっぱり、そうなんですね」
お約束、といえばお約束ですけど。マジですか。
「改めまして。私は夜風月(ヨカゼルナ)です」
「夜風月、か。宜しくな、夜風君」
「はい、宜しくお願いします。…近藤さん」
この出逢いが始まりで、どうやら必然的に…私はこの時代に深い関係性を持ちざるを得ないようだ。