第2章 壱 トリップ、してしまった。
切っ掛けは本当に些細な事で、自分がこんなにも呆気なく死ねるなんて、思いもしなかった。
急性心筋梗塞。
一度は聞いたことがある…といった所であろうその病で、私の人生は幕を下ろした。
が、同時に始まってしまったのだ。
突然の胸の痛みに倒れ、回りの声が薄れていく中で意識を失った自分。
次に目を覚ました時にはもう、頭を抱えたくなった。
何とも形容し難い、こんな物語の中でのお決まり…お約束というものは必ずあるもので。
「ここ、何処なの」
そんな言葉を発した私が目にしたのは、元いた世界とは程遠い…まだ科学技術も何も発達していない、約150年前の日本であった。