どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第5章 素性
雑草……。
“サキにとっても”という言葉の意味は考えたところで分かるはずもなかったが、今のヒソカの発言は誰かに怪我を負わせた宣言に他ならなかった。
『っ、サキ、探しましょう!誰かが助けを待ってるはずです!!』
私はサキに声掛ける。けれど彼女の反応は芳しくなかった。彼女は声のトーンを落として言う。
『……目に見える血液の付着がないのに、ハッキリ臭うのよ。怪我がコイツのものでないなら、助かる量の出血じゃない。人数にも依るだろうけど、まず手遅れよ』
『そんな……』
私は、胸をぎゅっと締め付けられた気がした。
名前も顔も性格も知らない、誰か。
でも、それでも、辛い。
それは多分、死にゆく誰かを想ってというよりも、その誰かのことを大切に想う人がどこかにいると思うからだろう。
生前に、死んでもいいと思っていた私が結局生きる選択を続けていたのは、父の死により、寿命でない死がどれだけ周りを悲しませるか知っていたからに他ならない。
そして私の死後、家族や兄弟に辛い日々が訪れた時、彼らの中の私に、同じ道の案内だけはして欲しくなかった──この意味では、事故死という結末にどこかほっとする部分もあったのだけれど。
でも、だからこそ、死というものの重さは理解しているつもりだ。
『じゃあせめて、ヒソカにその人の居場所を……!』
どうしても自分の目で確かめたかった私は、サキに縋り付くように嘆願した。
『……アンタって、ホント変よね。全くの他人に、どうしてそんなに必死になれるの?』
サキにそう尋ねられるも、気ばかり焦る私は、なぜ彼女がこの状況でそんな質問をするか分からなかった。
『他人とか他人じゃないとか、そんなに重要ですか?今、その人を助けられるのは私しか居ないかもしれない。なのに見ないふりをして、それで普通に過ごせるほど、私は強くないんです!!』
叫ぶ私に、サキは静かに目を瞑った。
『……分かったわ』
サキは瞼を持ち上げ、ヒソカを見上げる。そしてそこから更に一歩、彼に近付いた。
「教えて。その雑草はどこに生えていたか」
「行くのかい?刈り取られた後だと分かっていても」
「ええ。じゃなきゃサチが納得しないわ」
そう言って瞬きするサキと、ヒソカは暫し見つめ合った。