どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第5章 素性
「どうせ200階クラス以上の奴が気まぐれに下りてきたんだろうよ。あいつらは人間じゃねぇ」
「まぁそう言うな。確かにそうらしいが、面白いのはここからだぜ?」
男はフフンと鼻を鳴らし、得意気に語り始めた。
「そいつは、正に悪魔的な強さだったらしい。なにせ、それだけの人数の力自慢が束になって掛かっても、かすり傷さえ負わせられなかったんだ。とうとう、立てる者がただの一人も居なくなり、男は絶望の縁で死さえ覚悟したという。だがその時、男の前に金の目をした──女神が降り立った」
ぶっ、とサキが小さく吹き出す。顔を背け、ゴホゴホと咳払いして誤魔化す彼女を、男達はちらりと振り返り不思議そうに見たようだったが、すぐに噂話を続けた。
「女神だぁ?」
「まぁなんだ、とかくその女神様が現れてからは状況が一変したってんだ。男曰く、女神様はその悪魔を慈愛と慈悲の心により下らせ、倒れる男達の怪我をたちどころに治しては、風のように立ち去られたらしい」
「なんだそれ。どっかの神話か?」
「馬鹿野郎、俺は当事者から聞いたんだぜ?事実だ!」
『事実なわけあるか!!!』
盛られ方はちょっとどころではなかったらしい。サキは額に両手を当て、俯く。私自身も若干照れ臭く感じはしたが、それよりも彼女の反応が可愛らしくてニヤニヤした。
『笑うな!ってか今ヒソカが居ないのが唯一の救い……』
なんて考えていたサキの視線の先には、とても見覚えのある奇術師姿の男性。
しかも、まだ大分距離があるはずなのに、目と目がばつりと合ってしまう。
「お待たせ」
彼はペットボトルを二本と、その他多数の視線を引き連れ戻ってきたらしかった。
『最悪なタイミングだわ』