どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第5章 素性
サキは、割と冗談を言った。
けれど、自身について多く語りはしなかった。
『どうして、サキはあんな動きが出来るんですか?怪我の処置も』
話の流れで私がそう尋ねたとき、彼女は明らかに気落ちしたようだった。
『……必要に迫られてよ。力の無い者から死んでいくものでしょ?』
“力の無い者から死んでいくもの”。日本という平和な国で生きてきた私にとって、それは少しオーバーな比喩のように聞こえた。けれどそうではなく、言葉そのままの意味だということも伝わった。
彼女はどんな人生を歩んで来たのだろう。今は、何をしているのだろう。名前がたくさんあるらしいのも、関係しているのだろうか。
尋ねたいことは多くあったが、どれも無遠慮に聞けるほど軽い話では無いような気がした。
『聞こえてるわよ』
サキがふっと息を吐いて言う。あわてて、どうやれば彼女に聞こえないのだろうと思う私に、彼女が薄く笑った気がした。
『今は、まぁ、平たく言えば投資家ってところかしら。……あたしの人生の目標が、ある男に“死以上の苦しみを与えること”だって言ったら、引く?』
内容に反して、サキの口調は穏やかだった。
『どうして……投資家なんですか?』
誰を?とか、どういった理由で?とか、諸々浮かんだ言葉はあったが、彼女に対して言えたのは、その一言だけだった。
『まぁ、準備期間ってヤツよ。それより、アンタの話さ、もっと聞かせてよ』
サキに促され、その後私は前の世界での生活について話した。飛行機の存在にはとても驚かれたが、学校の話も彼女の興味を引いたらしいかった。私にとっては何でもない話も、彼女は身を乗り出すように聞いてくれる。
『……あの、サキ。私やっぱり、できるだけヒソカと向き合いたいです』
私は彼女と話せば話すほど、そういった気持ちが強くなってきていた。
『いつまでサキの中に居られるか分からないけど、いつか訪れる未来で彼を止められるくらい、肉体的にも精神的にも、強くなりたい。勿論、これは私の願望というだけで、サキに強制するつもりはありませんが……』
『アイツを止められるくらい、ねぇ。簡単に言ってくれるわ。……でもま、参考にしとく』
サキはそう言って、手櫛で髪を梳かした。