第15章 管理人のささやかな楽しみ
「ぷはー!おいしかった!ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした。ここのキッシュ他にも色々種類あったからまた買ってくるね」
「まじでか!!ありがと葵!ではでは、次はスイーツ担当の私の番だね!」
そう言って私は自身の座る椅子の横に置いていた紙袋を手に取り、中から楕円型の平たい箱をテーブルに置く。
「?なんだろう、クッキー??」
「ふふふふ、残念!クッキーじゃないんだなこれが」
私は箱の蓋を開けて中身を見せると、葵は感嘆の声をあげた。
「わあっ!カヌレだ!」
「そそ!」
「俺食べるの初めてだよ!」
「おっ!それは良かった!葵のキッシュも私のカヌレも実は両方フランスで作られたものなんだよ~」
「あっ、確かにそうだ!すごい偶然…!」
「私も正直びっくらこいてる。んで、本日こちらのカヌレに合わせるドリンクがこちら!」
どん!
「えっ、お酒?」
「うん!スパークリングワイン!せっかく私達も20歳になったんだし、今日は大人な感じでいこうと思いまして」
「俺、そんなにお酒強くないよ…?」
「全然大丈夫!私がほとんど飲む予定だから!」
私は持ってきたグラス2つにスパークリングワインを注いで、そのうちの1つを葵のテーブルに置く。
「なら安心だね。じゃあこはね、乾杯」
「かんぱーい!」
そして…
「ちょっ、葵!起きて!ここで寝たら風邪ひくよ!」
「やだやだ、ここで寝る!」
葵は、酔っ払ってテーブルに突っ伏したまま頑なに動かない。
「おまっ…爽やか王子様が酔っ払うとわがままになっちゃうとかどんだけ胸キュンポイント押さえてやがる!そんなの私は許さない!!」
「やだー!もう動きたくないの!」
私が葵の腕を引っ張ってみても、びくともしない。
いくら私が不審者を2人くらい倒せるからと言っても、大の男を運ぶのはさすがにきつい。
こうなったら…
「…っ誰かああああ!!ウッドデッキきてえええええええ!!」
仲間を召喚するしかない。