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私ヒーローじゃないんですが【ワンパンマン】

第2章 第1話


あれから1年半ぐらいだろうか。長いような短いようなこの1年半、たくさんの出来事があった。今ではサイタマさんのことを「兄さん」と呼ぶ仲になったり、どっかのお偉いさんからスカウトされて海外で怪人退治をしたり、……本当にたくさんのことがあった。これ以上あげるときりが無いので省略するが、ここ1年半で私はだいぶ成長できたのではないか。そんなことを考えながらキャリーケースを転がす。出入口を出ると眩しい日差しに目を細めた。
(ただいま、兄さん)
たった2、3日離れていただけなのに随分長く会っていない感じがする。早く帰って兄さんとうどんが食べたい。
空港からタクシーを捕まえようとタクシー乗り場に向かおうと歩き出したその時、巨大な爆発音と凄まじい勢いの熱風が突如襲いかかってきた。私は咄嗟に背中から羽を出し身とキャリーケースを守る。治まった頃には車数台はひっくり返り、人々は飛ばされたのか建物の壁に山積み状態になっていた。襲ってきた方を見ると遠くに人型の影が青い空に浮いている。
(怪人の類いか……?)
私は確かめるべく影の方へと羽を羽ばたかせ、空を飛んだ。

「なんだその適当な設定は……!」
気づかれないよう少し離れた位置で空中に止まっていると、怪人は誰かと言い争っているようだった。目を凝らすと怪人の目の前に兄さんがいた。
「やはり人間根絶やしにするほかないようだ!」
だんだん大きくなっていく怪人。だが、相手はあの兄さんだ。そんなことをしたところで結果は目に見えてる。
「ぐっはあああああああああああああああああ!」
怪人の胴体に穴が空いたと思えば一気に爆散してしまった。その風圧で体勢が崩れたがなんなく持ちこたえると兄さんはうなだれていた。
「くそったれぇええええええええええええ!」
「うーるさーい!」
兄さんの側に降り立つと小脇に抱えていたキャリーケースを置いて軽く頭にチョップしてやる。
「あ、シオン! だって今回は期待したのに――」
「いつものことじゃない。それより早く帰ってご飯が食べたい!」
置いてきたキャリーケースから丁寧に包まれた包みを取り出す。
「何それ?」
「卵! すっごい高い卵なんだって! だから今日は月見うどんにしよ!」
「相変わらずうどんが好きだなぁ」
でも月見じゃなくて天ぷらな、と兄さんは家に向かって走り出す。
「あっ、待ってよー!」
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