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私ヒーローじゃないんですが【ワンパンマン】

第2章 第1話


彼にお礼を言おうと向き直るがここで重大なことに気づいた。
「あの、お名前を伺ってもよろしいでしょうか」
「あ、そういや言ってなかったな。サイタマだ」
「サイタマさん、晩ご飯までご馳走してくださりありがとうございます」
深く頭を下げなるべく丁寧な言葉づかいを選んで、私は礼を言う。
「いいよそんなん。それよりこれからどうすんだ? 家に帰るなら送ってくぞ? 家どこ?」
「……大丈夫です。独りでなんとかできますから」
「もしかしてお前帰る家ある?」
「……」
「……ねぇのか」
それだけ呟くとじっと考え込んでしまった。何を考えているかわかんないけど気を使わせている事だけはなんとなく感じた。
「別に大丈夫ですから。私こう見えても強いですし――」
「お前この隣に住まないか?」
「……へ?」
隣ってここマンションかアパートの一室なのか。でサイタマさんは大家さん? ってことなのか。
「私お金持ってないんで家賃払えないし大丈夫ですから」
「家賃払う必要ねーよ。ここ人が住まなくなったマンションだから勝手に住んでも誰も集金こねーし。……実際俺もそんな感じだし」
「はぁ、さいですか……けど、私……」
「お前料理すらまともに出来ないうえに金もないんだろ。さすがにいきなり同居は難しいけど隣に住めばある程度の面倒は見てやれるからよ」
どうする? と聞くサイタマさん。彼の優しさに少しばかりの嬉しさと何故そこまでという不安の気持ちで頭がいっぱいになる。
「だ、大丈夫ですから! それに私と関わんない方がいいです。私は、私は――」
「あれか? クリーチャー化するやつを気にしてんのか?」
「――っ?! な、なんでそれを?!」
「まぁ、見てたからなぁ」
見てたんかーい! と私は心の中で盛大にツッコミをする。
「なら何故そこまで優しくしてくれるんですか? 怖くないんですか?」
「なんで身体張って市民を助けたやつを怖がんなきゃいけねぇんだよ。悪いやつでもないのに」
サイタマさんは当たり前だろと言わんばかりに言い切る。そんなことは始めてだった。いつも身体張って助けたところで化物だの怪人だの言われてきた私にとって――
「うっ、うぅっ」
「え、何?! ちょっと?!」
彼の優しさに泣いてしまうのは仕方ないことだ。
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