第4章 第3話
『今年の蚊の大量発生は世間に混乱を招いています』
そういえば昨日夜中に蚊の鳴く音がうるさくて起きたのを思い出した。触手で潰したけど今日も同じようにうるさいと寝れなくなるし……蚊取り線香でも買っとくか。
「大量発生とか勘弁してくれよ」
そういいながらベランダに出て行く兄さん。
「番組の途中ですが臨時ニュースをお伝えします」
テレビの画面が切り替わるとアナウンサーが緊迫した声で話し始める。
「Z市に大量の蚊の群れが向かっています!! 住民は絶対に外に出ないでください。災害レベル鬼!」
画面が切り替わり、無惨な姿をした牛達が映り出す。
「既に襲われた家畜はミイラ化していたとの事です。群れに接触したら確実に死にます」
さらに切り替わり、黒い竜巻が空一面に広がっているところが映し出された。
「これがその映像です!! まるで砂嵐のようです!」
私は気持ち悪くなってテレビの電源を切る。
(Z市ってここじゃん、窓閉めなきゃ)
と思っていたらベランダから破裂音に似た大きなが聞こえてきた。何事かと立ち上がった時には連続でパンパンとまるで銃声のように聞こえ出した。私は慌ててベランダに駆け寄る。
「兄さん?! ……何してんの」
ベランダを見ると兄さんは音速もあろう速さで踊り? みたいなことをしていた。
「くそっ! 逃した!」
「何を」
「蚊!」
「……なるほど」
(兄さんが蚊なんかを逃すとはその蚊もしかして怪人の類か?……いや、考えすぎか)
「あーくそ、シオン! スプレー!」
そう言われてテーブルの上にあった蚊に効くスプレーを投げる。兄さんはパシッと取って蚊に向かってスプレーをかけ始める。
(そもそも兄さんの攻撃を避ける蚊にスプレーってかけられるのかな)
案の定蚊はベランダから出てどっかいってしまったようだったが兄さんは手すりに飛び乗っていた。
「あ、待てこら!」
そのまま飛び降りた兄さん。
「え、ちょ兄さん!」
すかさず私もベランダから飛び降りた。