第1章 きっかけ
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放課後。
1日の授業を終えた私は帰る支度をする。
勉強が優先な為、部活は週に一回しかない。
学費も高いから家計が苦しい生徒はバイトをして補うのがほとんどだ。
幸い、私の家はそこそこ裕福な方なので学費には困らなかった。
「じゃあ、また明日」
私はミユとナナにそう告げ、学校を後にする。
校門を出てしばらく歩くと見慣れた後ろ姿が目に見えた。
少し猫背で紫色のパーカーを着ている。
私はその後ろ姿に声をかけた。
「一松くん!」
「っ…!?な、なに…?」
急に声をかけたからか、一松くんは戸惑っている様子だ。
私はニコリと笑う。
「えへへっ、こんなところで会うなんて奇遇だね」
「へっ…まぁね、ちょっと猫の餌を買いに…」
一松くんは少しだけ笑みを溢す。
よく見ると手に持ったレジ袋の中身は高級猫缶だ。
本当に猫が好きなんだなぁ…。
私はそっかとだけ言葉を返すと一松くんの隣を並んで歩いた。