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月のうさぎは跳ねるのか?

第2章 月のうさぎは選ぶのか?


(こわ、い…)

うさぎには何もかもが怖かった。
突然連れてこられた人間の住む下界も、妙に優しい顔で微笑んでいた親兎も、現在自分を見つめている男の視線も、全てに恐怖を感じてしまう。

(かえ、りたい…つくよみさまの神殿に…かえりたいよお)

自身の紋が刻まれた袴を強く握り、目に涙を浮かべるうさぎ。
自らをうさぎの上司だと告げ、無遠慮な視線を送る男も流石にバツが悪いのか1人でじっくりと選べとそそくさと部屋を後にする。

残されたのは刀身のままの5振りの刀と心細さに身を震わせる一羽のうさぎのみだ。

(かえりたい、けど…つくよみさまはとうばつ?をしろって…神格もあげてくださった…結果、でないと…帰れないよお)

ぐしゅぐしゅとついにこぼれ落ちた涙と鼻をすすり、彼女は自身の朧気な記憶をあさる。

刀については軽く、予習をしてきたのだ。
それを踏まえて改めて刀を見つめた。

(やまんば、ぎりくにひろ…写し?の刀偽物とはちがう、けど…よく分からない)

理解のできぬ武器を振るうことこそ世界で1番愚かな行為だ。
黒く、美しい拵えには惹かれたが諦めた。

(はち、すかこて、つ?偽物のおおい虎徹の中で珍しい本物…ピカピカ)
陽の光のようにキラキラと光る黄金はうさぎの目には眩しかった。
キラキラ光るものはカラスに狙われるのだ。
こちらもため息とともに諦める。

(むつの、かみよし、ゆき…幕末のいしん
のしし?の佩刀、実際に切ったことはない、らしい)
人を切ったことの無い刀、それはうさぎに独特の圧迫感を与えない分、敵を斬らせることに対する罪悪感を覚える。


(かしゅ、きよみ、つ…新選組?の刀…人を…沢山斬った刀)
じわり、と深い光沢を持った赤が滲んだように感じ、慌てて刀から離れる。

(あっ…これは…)

最後に残った刀をうさぎは迷わず手に取った。
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