第2章 月のうさぎは選ぶのか?
陽だまりにいるような暖かい光、そして舞い踊る桜吹雪。
現れたのは夜明け前の空の色のような不思議な紫の髪の付喪神。
「僕は歌仙兼定。歴代兼定でも随一と呼ばれる二代目、通称之定の作さ。
名前の由来は三十六歌仙から。風流だろう?」
優しい顔の美丈夫にこれからよろしく頼むよ、と差し出された手をうさぎが受け取ろうとすると、何でもないように爆弾が落とされる。
「……まあ、元主が手打ちにした人数が36人だったから、と言うと、みんなどういう顔をしていいかわからなくなるようだけれど、ね?」
「………!?!?」
歌仙兼定、歌仙拵という拵えが生まれるほど美しい拵え、そして歴代兼定の中でも随一と呼ばれた之定の作。
そして三十六歌仙から取られたという優美な名前。
うさぎの知っていたのはここまでだったのだ。
その結果、余りにも血なまぐさい話を聞いたうさぎは
ーーぽひゅんっ
兎の姿に戻って残りの4振りを倒しながら部屋の反対側に逃げた。