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失われた詩

第2章 天使の歌声



黒崎さんとは以前ドラマを共演した
ときから仲良くさせていただいている

困ったことがあれば親身になって相談に
のってくれるし、今みたいに面白いこと
をして笑わせてくれる

なんていうか、お兄ちゃんみたいな存在。

それでもって同じマンションに住んで
いて、お隣さんだ。


『黒崎さんも今帰って来たんですか?』

「ああ、お前より少し前だな。ポスト確認したらお前がイケメンと車から降りて来たのが見えたから待ってたって訳だ」

『そうだったんですね。今日もお疲れ様です』

「俺よりお前の方が忙しいだろ。ドラマに映画と引っ張りだこなんだからな!」

『いえ、QUARTET NIGHTさん程ではありませんよ』


黒崎さんとエントランスを後にしてエレ
ベーターへと乗り込む

36階のボタンを押して閉ボタンを押す

エレベーターには私と黒崎さんの2人きり


「お前、ちゃんと食べてるのかよ」


手すりに寄りかかって外の夜景を眺めな
がら黒崎さんは聞いてきた


「前に会ったときより腕細くなってんじゃねーかよ」

『あ・・・』


さっき腕を掴まれたときに気づかれちゃったのか

黒崎さんはどんなに小さいことでも気づく


『最近は忙しくて···あまり····』

「だろうと思ったぜ。お前今日暇か?俺ん家でメシ食ってけよ」


黒崎さんの顔を見上げるととても優しい笑顔を浮かべていた


『それじゃあ、遠慮なくご馳走になります』

「おう」


黒崎さんは料理が得意で、たまにこうして
ご馳走になることがある

彼の作るオムライスはチキンライスの上に
オムレツみたいにふわふわの卵が乗ってい
て、ナイフで切り込みを入れるとふわあっ
と卵がとろけ出てくる。

私は彼の作るオムライスより美味しいオム
ライスを食べたことがない


間もなくチーンという音とともにエレベー
ターは36階に到着した


『それじゃあ、着替えてから伺いますね!』

「鍵開けとくから勝手に入れ」


私達はそれぞれの家へと帰る








ドアが閉まると家の中は当たり前だけど
真っ暗で何も見えない

私はいつものように壁に手を這わせて証明
のスイッチを押す

オレンジ色の証明が広い部屋全体を明るく照らす


『ただいま···』


一人暮らしだし当然返事は返ってこないけど
家に帰ると欠かさず言う


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