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失われた詩

第2章 天使の歌声




ソファ目掛けて乱暴にバックを放る

1人で暮らすには広めの2LDKの家。
実際使っているのはこのリビングだけ。

他の部屋にはベッドはおろか、家具1つ
として置いていない


1人の家は、嫌い。


かと言って私もレンと同じで幼い頃に
両親を亡くしていて、兄弟や、まして
や血縁関係の者は1人としていない。


子どものときからずっと1人で生きてきた。

そしてきっとこれからも1人・・・


夜になると無性に寂しくなる。
なんでだろう?

放ったバッグをボーッと眺めていると
ふわっとシトラスの香りが私を包んだ

驚いて後ろを振り返ろうとするとそれ
は叶わなかった

何故なら私は今、後ろから黒崎さんに
抱きしめられているから


『く、黒崎さんっ?!』

「鍵閉めろっていつも言ってんだろ。なかなか来ないからまた泣いてるのかと思って来ちまったぜ」


前にも1人の夜が寂しくて泣いていると
たまたま料理のおすそ分けに来た黒崎さ
んに見られてしまったことがある。

あのときも黒崎さんは私が泣き止むまで、
寂しくなくなるまで優しく抱きしめてい
てくれた。


『私、今日は泣いてないですよっ』

「知ってる。けど、もう少しこのまま・・・」


黒崎さんの腕の中はいつも暖かくて、
優しくて、その腕に抱きしめられている
とぽかぽかと身体が暖まっていく気がする。

そんな優しい黒崎さんにいつも甘えてしまう

しばらく抱きしめられていたが、私のお腹
がぐうっと大きく鳴いてしまった


『あっ···』

「ぷっ、お前は欲に素直だなぁ」


黒崎さんは私を離してくくっと笑いを堪えている


「早く着替えてこいよ。メシにしようぜ」

『うう、ハイ···』


可愛げもなくお腹が鳴ってしまったことに
少しだけ恥ずかしくなって頬が暑くなる


安心してしまったとはいえ黒崎さんの前で···

ああ、恥ずかしいっ···


くるりと向きを変えてルームウェアがしま
ってあるウォークインクローゼットに向かう

黒崎さんはソファに座って鼻歌を歌っている

ハンガーにかかっているもこもこのルーム
ウェアに着替えて黒崎さんのいるリビング
に行く


「お待たせしました」

『おし!そんじゃ俺ん家行くか』


よいしょと立ち上がって玄関へと向かう彼の
後ろを着いて行った


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