第3章 早乙女学園
「こらナギ、セリと綺羅を困らせちゃダメだよ」
突然後ろから聞こえた少し低めの、だ
けどとても暖かい声
「瑛二ぃ···」
『瑛二くんっ?!いつから···』
いつの間にか後ろにいた瑛二くんに少し
だけびっくり
瑛二くんはニコッと微笑むと私の肩に手
を置く
「ほらナギ。セリはこれから俺と撮影なんだ」
「うう、分かったよー」
しぶしぶ手を離すナギちゃんを見て綺羅
さんも心なしか笑顔を見せる
「じゃあ行こうか」
瑛二くんに手を引かれて私達はその場を
後にした
柱の物陰から一連の流れを見ていた山田
さんが姿を表した
『ちょっと!なんで隠れてたのよ!』
「いやぁ、HE★VENSの皆さんが全員揃うと迫力が···」
「ふふ、そんなことないですよ。セリの方がずっと魅力的です」
『えっ、ちょ···瑛二くん····』
この人はこうやってさらっと恥ずかしいこ
とを言ってくる
こんなかっこいい瑛二くんに言われたらテ
レちゃうよ~···
そんなこんなでスタジオまで来て私達は
それぞれ用意をする為に別行動
セットはカフェみたいな造りになっている
「鳳瑛二さん入りまーす!」
若めのスタッフさんの声と共に瑛二くん
がスタジオ入りする
青いチェックのシャツに白いパンツ、そ
して黒のジャケットを羽織っている
その姿はオシャレな大学生を思わせた
『瑛二くんかっこいい!』
私の言葉に頬を少し赤らめる彼
「ありがとう。セリも充分可愛いよ」
『ふえっ?!あ、ありがとう···』
2人して下を向いてもじもじしている
と、そこへ監督がやってきた
「今回は大学生カップルがデートの最中にカフェに入ったところでこのチョコに出会う、的な感じでお願いしたい」
「分かりました」
監督の大雑把すぎる説明に何一つ慌てる
こともなく瑛二くんが了承する
何でも卒なくこなす瑛二くんは大人だと思う
「もう少ししたら撮影始めるから、それまでに2人でどんな感じでいくか相談しといてくれ」
そう言うと監督はセットの方へと行ってしまう
『あの監督凄く大雑把。瑛二くん、どうする?』
ちらっと瑛二くんを見ると腕を組んで考える
素振りをしていたがやがて何か思いついたよ
うに顔を上げた
「セリ!こんなのはどうかな?」