第2章 天使の歌声
神宮寺レン ──────
神宮寺財閥の御曹司
そして、私の幼馴染み。
レンは薔薇を持っていないもう片方の手を
取るとチュッと軽いリップ音を立てて手の
甲にキスを落とした
さらりと肩から流れるオレンジ色の髪
ガラス玉のように透き通った水色の瞳
その姿はまるでどこかの王子様を連想させる
『そういえば、誠一郎さんの件は大丈夫だったの?』
レンの両親は既に他界しており、残された
兄弟は兄の方はお父様の会社を継ぎ、レン
は見た通り自由に過ごしていた。
「2人きりのときにそんな話し、か。全く、Ladyはいつもそうだよね。昔から俺と2人きりの甘い時間を楽しもうとしない」
『レンと誠一郎さんが心配なのよ···』
「相変わらず優しいね」
車は静かに走り出した
レンは長い足を組んでその膝に肘をつく
「兄に早乙女学園へ入学するように言われたよ。神宮寺の広告塔になれってね」
『広告塔···?』
「兄は俺を道具としか思っていないのさ」
『そんな···ん、待って。早乙女学園?!』
いきなり大きな声を出したからか、レンの
瞳は大きく見開かれた
「どうしたんだいLady?そんな驚いた顔をして」
『レン!私、シャイニング早乙女さんから早乙女学園来ないかって言われてるの!』
「何だって? あの学園はアイドル育成を目的としているんだろう?何故Ladyが?」
『私もよく分からないんだけど…シャイニング早乙女さんに私には足りないモノがあるって言われて···』
「Ladyに足りない物?」
レンは足を組んだまま腕を組み、考える素振りをしている
「Ladyに足りない物、俺には皆目検討もつかないな。それで? Ladyはどうするんだい?」
ガラス玉のような透き通った水色の瞳が
私を見つめる
『んー···正直まだ悩んでるけど、私に足りない物が何なのか知りたいっていう気持ちはある、かな』
「さすが My Lady !決めた。俺も早乙女学園へ行くよ」
片目をパチンと瞑ってウインクをする
「兄の思惑通りになるのは悔しいけど、Ladyと学園ライフを送れるなら目を瞑るさ」
『レン···ありがとう!』
そして私達を乗せた車は夜のネオンが輝く街へと消えて行った