第2章 天使の歌声
『ねえ、トキヤ?この映画の主題歌を私歌うんだけど、もしトキヤが出演してくれるなら主題歌はトキヤの方が良いって監督に推薦しても良いよ?』
私の提案に一瞬トキヤの眉がピクッと反応する
「ほんとに貴女って人は。そんなことしてもらっても嬉しくはありません。私は実力で歌の仕事を貰いたいのです」
『うう····。手強すぎる~!』
「分かりました。今回だけですよ?」
『え? え?出演OK?』
「ええ。貴女の演技をまた間近で見れると思えば安いものです」
ああ、トキヤの困ったように笑うこの顔···好き。
『ありがとうトキヤ!大好きっ』
「その言葉は本当に好きな人が出来たときに言ってあげてください」
トキヤの大きくて温かい手が私の頭に置かれる
そのままぽんぽんと子どもをあやすみたいに
2、3度叩かれる
控室は温かい空気に包まれた
「HAYATOさんスタンバイお願いします!」
扉の外からスタッフの声がしたと同時に
トキヤの手は私から離れた
「分かりました、すぐに行きます」
『トキヤ・・・』
「HAYATOと何度言えば分かってくれるんですか? では、行ってきます」
ニコッと笑うとトキヤはスタジオに
向けて足を進めた
『いってらっしゃい!頑張ってね!』
私の言葉にトキヤは片手を挙げて答えてくれた
自分の控室に戻るとそこには慌てている山田
さんとサングラスをかけたオジサンがいた。
『え? どちら様?』
「フフーン、meはシャイニング早乙女で~す。youが天使の歌声を持つと言われているセリですか~??」
シャイニング早乙女と名乗るオジサンは椅子
の上でくるくるとバレリーナのように回って
いる
『天使の歌声、か。その言い方は好きじゃないけど、私がセリです』
名乗りを上げるとシャイニング早乙女さんの
サングラスがピカッと光る
「フッフッフ~♪ youをスカウトしに来ました~! meの早乙女学園に来なさ~い!」
『?!』
早乙女学園 ───────
音楽の道を進む者はその名前を知らない者
はいないだろう。
アイドルと作曲家の育成学校
でも、既にデビューしている私をスカウト?
「youには足りないモノがありま~す」
『足りないもの?』
「ye~~~~s!」