第2章 天使の歌声
「さりあ、映画のオファーが来たよ」
歌番組の収録の出番を控室で待っていた
私にマネージャーの山田さんがメガネを
くいっと上げて言ってきた
『フーン、何の映画?』
「恋愛映画だね。それも兄妹で恋愛する設定。そしてその主題歌も、とのことだ」
『近親相姦かぁ…相手役は?誰?』
「相手役・・・ん?! HAYATOだ!」
「HAYATO?!やる!そのオファー受けて!」
ガタッと慌ただしく椅子から立ち上がると
走って自分の控室を後にした
行き先は同じ歌番組の出演者でもある
HAYATOの控室だ
ドアの横にHAYATO様と書かれた楽屋貼り
を見つけるとドンドンと扉を叩いた
少ししてカチャリという音と共に開かれた
扉の先にHAYATO、一ノ瀬トキヤは立って
いた。
『トキヤおはよう!ね、映画の話し聞いた?!』
ずいっと身を乗り出してトキヤに問いただす
そんな私を見てため息を1つ吐いてから開いて
いた扉を閉めてトキヤは口を開いた
「全く貴女って人は···。ここではトキヤではなくHAYATOと呼んでくださいとあれほど言っているのに」
『あはは···嬉しくってつい。ごめんねトキヤ』
「言った側から···。それで、映画の件でしたっけ?」
『うん!久しぶりのトキヤとの共演!』
「私はまだ受けた訳ではありませんよ」
『ええ?!!』
静かだった控室に私の声が響いた
トキヤは両手で耳を塞いだ
『なんでなんで?!せっかくトキヤと一緒にお仕事出来ると思ったのに~』
「はぁ····。前にも言ったでしょう?私がやりたいのは映画やドラマではない、と」
『うっ····でも····』
トキヤが本当にやりたいこと・・・
それは歌うこと。
前に1回だけ話してくれたことがある。
トキヤが事故で入院してたときのこと。
「私は歌いたいのです。映画等に時間を取っている場合ではありません」
この話しをするときの彼の目は真剣だ。
そんな彼だからこそ応援してたつもりだ
けど···
久しぶりにトキヤと共演出来ると思ったのに残念すぎる····
歌いたい、か。
歌・・・
ん? 歌?
良いこと思い着いちゃった!
私はジャケットを羽織るトキヤの前に立った