第2章 天使の歌声
『···好き。ずっとトキヤのことが好きだったのっ!』
ポロリポロリと涙が溢れてくる
私はずっと好きだった彼に思いを打ち明けた
それは空一面がオレンジ色に包まれた
静かな教室での出来事。
『トキヤが私のことを嫌いでも···それでもっ、あの日私に差し伸べてくれた手の温もりを忘れられないのっ』
伝えたい。
伝えたい。
私がどれだけ貴方のことを思っているのか
私がどれだけ貴方のことを好きなのか
『トキヤのことが、好き』
涙はまるで止まることを忘れたみたいに溢れ続けている
「私、は······」
彼は少し困ったように眉を寄せ、その紺碧の
色をした瞳は伏せられたままだ
掌をギュッと握っている姿は私をどう拒もう
か考えているのだろう
どんなに好きでもこの思いは決して彼に届くことはない
分かっている。
だって私達は “兄妹” なのだから・・・
私は実の兄に恋をしてしまった。
やがて意を決したように彼は真っ直ぐに私を見つめて口を開いた
「愛、今ならまだ戻れる」
『嫌っ!もうトキヤのことお兄ちゃんに思えないよっ』
「兄妹で恋愛なんて許される筈がないだろう!」
『分かってるっ、分かってるよ!誰にも許されなくて良いっ、だから···お兄ちゃんだけは、私のことを許して···』
「・・・っ」
何もかも全部壊れて良いと思った。
戻れなくても良いと思った。
私は自分の唇をトキヤのそれに押し付けた
少しして私の腰に回された腕···トキヤの腕。
『···トキ、ヤ』
「許すよ。愛の全部を許す」
『おにぃちゃ····それっ、て····』
「好きだ。好きだよ、愛」
再び重なる唇 ─────────────
「カットォォオオオ!!!」
教室中に響いた監督の声
それを合図に私達は離れる
「カット!カット!イィよ!!HAYATOくんもサリちゃんも最高だよォ!!」
『「ありがとうございます」』
「この映画は絶対ヒットするわ!間違いないわよ!!」
身体をくねくねとさせて女喋りをしながら
私達に近づいてくるこの男の監督は業界で
は名の知れた有名人だ。
そんな彼の映画のオファーが来たのはかれ
これ3か月も前のこと