第2章 天使の歌声
ギュッと目を瞑ったものの特に何
をされるでもないのでそろーっと
目を開けるとそこには笑いをこら
えている黒崎さんが映った
「くく、俺がせりあに手ェ出すかよ」
『え? 何? またからかわれた?』
「言っただろ、俺の女になりたければ色気つけろってな」
『なっ!!?』
ピンっと人差し指で額を弾かれてその
まま私の横にゴロンと寝転ぶ
『黒崎さんのばーか…』
弾かれた額に手を添えてポツリと呟いたが
黒崎さんには届かなかった
「ほら、寝んぞ」
ポンポンとベッドを叩いているその横にちょ
こんと身を寄せるとまた優しく抱きしめられ
た。
彼曰く、このスタイルが1番安心して眠れるそうだ
そしてそれは私も同じ。
彼に抱きしめてもらうとすぐに眠気が襲っ
てきていつの間にか眠りについている
「おやすみ、せりあ」
次の日、目を覚ますとベッドに黒崎さん
の姿はなかった。
代わりに手紙が1枚、枕元に置いてあった
“ せりあへ
朝メシ作ったからちゃんと食えよ ”
用件だけを短く書いた手紙
それを片手にリビングに行くとテーブルの
上には綺麗に盛り付けされたサラダやオム
レツ、トーストがラップされて置いてあっ
た
『美味しそう・・・』
一度洗面所に行き、顔を洗ってから席につ
いてそれらを食べる
言うまでもなく、美味しい。
ゆっくり食べてから空になった食器を片付
けて、自分の家に帰った
それから着替えなどの身支度をすませる
とインターホンの鳴る音
続いてドアをドンドンと叩く音
「せりあー? 起きてるー?」
『はーい、今行くー』
ガチャッとドアを開けるとスーツに身を
包んだ山田さんが立っている
「携帯全然繋がらないからまた寝坊かと」
山田さんに言われてカバンから携帯を取
り出すと画面は真っ暗のまま
『あり? 電池切れちゃってた』
ぺろっと舌を出して謝ると呆れた顔とため
息をもらった
「はぁ、常習犯じゃないですか」
『ごめんって!次から気をつける!』
「ほんとに···お願いしますよ、まったく」
『はいはい。じゃあ行こっか!』
山田さんはメガネをくいっと上げるとエ
レベーターに向かって歩き出した