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失われた詩

第2章 天使の歌声




カチャカチャ

部屋には食べ終わった食器を洗う音
だけが鳴っている

キュッと水を止めてタオルで手を拭く
黒崎さん

それすらも絵になるほどだ


「お前今日はどうすんの?」

『えっ』


その言葉の意味
こうして黒崎さんにご飯をご馳走になっ
たときは必ずと言って良い程泊まってい
る。

だからもちろん今日だって


『お願いします···』


おずおずと黒崎さんの顔を伺うと彼は
ニカッと笑う


「おう! 風呂沸かしてあるから先入れ」


そういうとクローゼットからタオルを出
して頭の上にポンと置かれた

それを手に取ってお風呂場へと向かった















お風呂から出るとリビングはとても静か
で、きょろきょろと黒崎さんの姿を探す
とソファで眠っていた

膝の上で雑誌が開かれているところを見
るとどうやら読んでいる途中で意識を手
放してしまったのだろう

私は寝室から毛布を一枚持ってくると黒
崎さんにかけてあげた


『お疲れ様です』


するとパシッと腕を引かれて私の身体は
ソファで寝ていた筈の黒崎さんの胸の中
へと吸い込まれた


『え、ちょっ、黒崎さん?!寝ていた筈じゃあ』


今まで眠っていた黒崎さんの身体は体温
が上がっていたせいもあってとても暖かい

まるでお日様に包まれているみたいに


「ハッ、寝れるかよ。お楽しみはこれからだろ?」


そう言うと彼は軽々と私を抱き上げて
そのまま寝室へと歩き出した

壊れ物を扱うように優しく私をベッドに
運ぶとその上に黒崎さんが覆い被さる


「デザートが食いたくなっちまった」

『え? え? それじゃあ私、何か買って···んっ』


私の唇に黒崎さんの綺麗な指が押し付け
られた


「黙れよ。この状況でそんな訳ないだろ?」

『・・・ッ』


静かな寝室でギシッとベッドの軋む音


「せりあ、男が下心ナシに優しくすると思うか?」

『え···っと、思っ、う···?』

「バーカ」


黒崎さんの綺麗な顔が迫ってくる


『く、黒崎さんっ!』


私の必死の抵抗なんて全く意味を成していない


「蘭丸。いつまでもそんな他人みたいに呼ぶなよ···」


さらに距離を縮められて覚悟を決めてキュッ
と目を瞑った


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