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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)




自分では何の価値も見出していないけれど、“真珠の人魚”が流す涙を世界は至宝と呼んでいる。
それを“いらない”と言い捨てた者は、今まで一人もいなかった。

「いらない・・・? どうして・・・?」
「まだだ・・・お前の涙が引っ込んでから話す」

ギュウギュウと目を押さえつけてくる右手。
そのせいで、せっかくもう少しで流せそうだった涙が行き場を失ってしまう。

「ちゃんとお前の目を見て話したい」
「・・・・・・・・・・」
「だから涙が引っ込んだら教えてくれ」
「も・・・もう、引っ込んだ・・・」

するとようやく、“ホントーか?”とちょっと疑いつつも、両目を塞いでいた手を放してくれる。
久しぶりに目を開けたせいか、夜空に浮かぶ月の淡い光でさえも眩しく思えた。

「よし、もう大丈夫そうだな!」
「ロシナンテ・・・貴方・・・!」
「ん? ああ・・・」

クレイオの目から涙が流れていないことを確認し、ホッとしているロシナンテ。
でもその海兵の目にこそ、涙が浮かんでいた。

「なんでロシナンテが泣いてるの?! 私には泣くなって言ったくせに・・・!」
「だってよぅ・・・お前がおれのためならいくらでも泣くなんて言うから・・・」

それで何故、ロシナンテの方が泣くのだろう。
喜ぶならまだしも、どうして・・・?
人間とは不思議な生き物だ。

ロシナンテは手の平でグシグシと涙と鼻水を拭ってから、真剣な瞳でクレイオを見つめた。


「おれは確かにドレスローザを守りたい。それは偽りのない思いだ」


そして、ドフラミンゴの恐ろしさも、自分の無力さも知っている。
だからこそ分かったんだ。

おれには全てを守る力が無いということを───






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