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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)




「ヒマワリ」


太陽の方を向いて咲くという花。


「実際に見たことはないけれど、いつか大切な人と一緒に見たいから・・・」


輝く太陽に憧れて生きるその花は、海の底で生きる人魚や魚人を象徴しているようだ。


「ヒマワリを・・・私の背中に描いて欲しい」


クレイオはもちろん、その花には「あなただけを見つめる」という意味があることを知らない。
だが、健気に愛する人を待つ彼女に相応しいと、誰もが思うだろう。


「烙印が全て見えないようにとなると、絵はかなり大きくなってしまうが大丈夫か?」
「大丈夫。お花畑のようにたくさん描いて欲しい」
「承知した」

男はクレイオに心変わりが無いことを確認すると、深呼吸を一つした。
その瞬間、男の纏う空気が変わる。


「5代目ホリヨシ、貴殿の御覚悟を彫らせていただく」


平常心を以て生と死に臨み、一瞬に全てをかける侍。
その彼が持つノミによって刻まれる“覚悟”は何よりも潔く、美しいもの。



「完成するまでは長くかかる」

ホリヨシはクレイオの背中に咲き誇るだろうヒマワリの花を思い浮かべながら目を細めた。

「その間・・・聞かせてくれぬか?」


何故、“ヒマワリ”なのか。

そして・・・

何故、悲しげな瞳をしているのか。


「拙者を信じ、ここシャボンディ諸島に辿り着くまでのことを聞かせて欲しい」


お前の心に惚れた。
自分の持てる技術を尽くして、その背中に大輪の花を咲かせよう。


「ホリヨシ・・・」


クレイオはしばらく男を見つめていた。
自分のことを語るのを迷っているようだった。

しかし、目の前にいる親子は私利私欲とは無縁に自分を助けてくれた。

彼らを信じるために、これ以上の理由はない。


「私は・・・ある運命を持って生まれた人魚」


ゆっくりと口を開いたクレイオ。

それは、運命の三女神が紡ぎ出した最も美しく、悲しい糸で繋がれた、人魚と海兵の物語だった。












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