第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
勝者が歴史を作る───
それはドフラミンゴの持論だが、時に歴史が勝者を選ぶこともある。
正当な血筋とはいえ、ドフラミンゴが王位に就いていることを“時代”は許さなかった。
何年もかけて練ってきた計画が、彼の知らないところで少しずつ少しずつ綻んでいく。
それはきっと、彼が一枚の手配書を持って王宮に帰ってきた瞬間から始まっていたのかもしれない。
「おい、これを見ろ」
1週間ぶりに外出から戻ってきたドフラミンゴは、中庭でトランプゲームに興じていた幹部達の目の前に紙切れを置いた。
それは海軍が発行した手配書で、随分と新しい。
そこに書かれている人物が“ルーキー”だと、誰の目にも明らかだった。
「これって・・・」
手配書の写真を見た瞬間、ベビー5の瞳が大きく開いた。
ちょうどそのベビー5からジョーカーを引いたところだったバッファローも、口をあんぐりと開けている。
その様子を見て、ドフラミンゴの口元に笑みが浮かんだ。
「“死の外科医”トラファルガー・ロー・・・やはり生きていたか、フフフフ」
まだ規模が小さな海賊団で、船長の懸賞金も億に達していない。
それでも王下七武海の目に留まったのは、そのルーキーこそがずっと探していた人物だからだ。
「どれどれ、見せてみろ」
それまで退屈そうにワインを飲んでいたディアマンテもテーブルの上に置かれた手配書を覗き込み、その大きな口を歪めながら笑った。
「ウハハハハ! 相変わらず陰気臭ェ顔したガキだな、オイ」
「何てことを言うざますか、ディアマンテ! 可愛いローちゃんの面影はちゃんと残ってるざますよ!」
かつて幼いローにリボンをつけるなどして“可愛がって”いたジョーラが、甲高い声をあげながら懐かしそうに手配書を見つめる。
10年以上前、2代目コラソンと一緒に姿を消したドンキホーテファミリーの少年は、すっかりと大人の顔になっていたものの、暗い陰を落とすその瞳は昔と変わっていなかった。