第1章 始まりと終わりの町(シャンクス)
「クレイオ・・・」
シャンクスは、クレイオがいつ、誰に“不老手術”を施されたかは知らない。
その物語は、クレイオだけのものだからだ。
ただこうしてクレイオが年を取らずに生きているという事実によって、“オペオペの実”の究極の力は世に知られることとなった。
「私は永遠の命を持つ女として、ロジャーの意志を継いだ人間が築く時代の語り手になっていくつもり」
だからもう、“オペオペの実”を探すことも、死に方を考えることもしない。
ロジャーが生まれ、そして死んだ町に一人残り、彼の意志がどのように受け継がれていくかを見届ける。
するとシャンクスは体勢を変えてクレイオと向き合うようにすると、無精ひげが生えた顔でニッと笑った。
「ああ、それがいい! で、これはおれの願いなんだが・・・」
いつかシャンクスが老いて死んでも、クレイオはこのままだろう。
今は子どもにすぎない次の時代の担い手達も成長し、そのまた次の時代の担い手が誕生しても、クレイオはこのままだろう。
だからこそ・・・
「お前に残して欲しいのは、“海賊”としてのおれ達の生き様じゃない。そりゃきっと、海軍がご丁寧に残してくれるだろうからな」
海賊がどこでどう暴れたか・・・など、それこそ海軍が詳細に記録していくだろう。
「お前には“人間”としてのおれ達の生き様を残して欲しい。ああやって、ハイビスカスを窓辺に飾っているように」
海賊が誰を愛し、どのように人と関わっていったか。
それを物語として残していって欲しい。
「ロジャー船長から始まった、“ひとつなぎの物語”を紡ぐのはお前だ」
それができるのは、クレイオだけ。
そして、シャンクスは胸に誓う。
「とち狂った時代をお前が残す羽目にならねェよう、おれがしっかりと繋いでいく」
麦わら帽子と左腕。
シャンクスがその二つを懸けた少年こそ、ロジャーが待っている男であり、クレイオが紡ぐべき物語の核となる人物だ。