第3章 ある娼婦と海賊のはなし ~サンジ編~
「サンジくん、アイスティーを貰える? お風呂入ったら喉が渇いちゃった」
キッチンのドアが開き、入ってきたのは風呂上りのナミ。
胸が大きく開いたキャミソールに、必要最低限の部分しか隠していないホットパンツ姿は相当刺激的だ。
しかも、洗ったばかりの濡れた髪が、より色気を増している。
いつもなら“ナミさーん!!”と鼻血を出しながら飛びつくサンジだったが、今はその姿を見たくなかった。
「ナ、ナミさん・・・!」
「ちょっと、どうしたのサンジくん! 指を怪我しているじゃない!」
「割れた皿の破片でちょっと切っただけさ。大丈夫、心配しないで。アイスティーだっけ、今淹れるよ」
「そんなのいいわよ! 確か消毒液と絆創膏があったわよね、どこ?」
ただ指を切っただけなのに心配してくれるナミに申し訳ないと思うと同時に、放っておいて欲しいと思ってしまう。
サンジはなるべく平静を装いながら、食器棚の引き出しを開けているナミに笑顔を向けた。
「これくらい舐めときゃ治るよ。それよりアイスティーは持っていくから、アクアリウムバーで待ってて」
「・・・サンジくん?」
紳士的な態度は変わらないが、いつもなら“ナミさんが手当てしてくれるの!?”と鼻の下を伸ばしそうなもの。
まるで自分を避けているかのようなサンジの態度に、ナミは違和感を覚えた。
「どうしたの? 手を怪我するなんてサンジくんらしくないし、それに・・・」
顔が赤い。
しかも、レディーを見る時のそれとはちょっと違っているような気がする。
「もしかして、熱でもあるんじゃない?」
熱を測ろうと、額に触れようとするナミの手。
サンジは反射的に身を引いて逃れると、うまい言い訳を思いつかぬまま湯を沸かすためにコンロの方へ逃げた。