第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「ゾロ」
船に乗る直前、クレイオの手がゾロの服の裾を掴む。
振り返ると、何かを言いたそうに頬を上気させた彼女の顔がそこにあった。
伝えたい事はたくさんある。
夢を叶えて欲しい。
死なないで欲しい。
忘れないで欲しい。
でも、それ以上に伝えたい事。
それは───
「行ってらっしゃい」
麦わらの一味にして、“海賊狩り”ロロノア・ゾロ。
きっと今の貴方には、私の存在すら重荷になってしまう。
私の想いすら足枷になってしまう。
海賊は自由でいることが一番なのだから。
「行ってらっしゃい、“最果て”まで」
これまで“海賊王”ゴールド・ロジャーしか成し得なかったことを、貴方達が果たしてきて。
するとゾロは何も言わずにクレイオの後頭部を掴んだ。
強引に顔を引き寄せると、唇に深くキスをする。
1秒・・・2秒・・・
何十秒経っただろう。
言葉にならない会話をするように互いの舌を絡めていた二人は、想いが伝わり切ったとばかりに唇を離した。
そして、ゾロは最後にクレイオの頬を撫でてから、気合いのこもった顔で姿勢を正す。
「うし! 行ってくる!!」
まずは仲間達のもとへ───
二年間修行し、他を圧倒するほどの覇気を身につけた剣士は、グランドラインの後半の海を目指すべく、果てしない海へと帆を上げた。