第3章 幹部と共にする夕餉
「…しかし、今日も相変わらずせこい夕飯だなぁ」
千鶴の紹介が終わった所で、永倉が膳を見ながらそう口にした。
膳に乗せられているのは、山盛りの飯に、焦げた鰯と青菜のお浸し。それに、長時間そのままにされていた為冷えてしまったであろう味噌汁だった。誰が見ても分かるだろうが、大変質素なものである。
「というわけで……隣の晩ご飯、突撃だ!弱肉強食の時代、俺様がいただくぜ!」
「ちょっと、新八っつぁん!なんでオレのおかずばっか狙うのかなあ!」
「ふふ、随分と愉しそうじゃないか」
どれ…と、丁度永倉の隣に座していたのもあり、ばれない様に…乗っていたお浸しを盗った。
…うむ、やはりお浸しは一が作ったのであろうな。味付けが私好みだ。
「ああっ、何すんだてめぇ!」
「へへへっ。もう食っちゃったもんねえだ。うわっ!?返せ、オレのお浸しっ!」
「ごっくん……?…なっ!?俺様のお浸しがねぇ!!」
気付かれたか。が、私が盗った事は気付かれていないだろうな、…ふふ。
「毎回毎回、こんななんだ。騒がしくて、すまないな」
「い、いえ」
左之と千鶴の会話が聴こえて、耳をそちらへと傾ける。
「……それより、沖田さんはもういいんですか?」
その言葉に彼を見ると、既に箸を置いて手酌で酒を呑んでいた。
「うん、あんまり腹一杯に食べると馬鹿になるしね」
「ならばこのおかず、俺がいただく」
そう云って一が素早く総司の膳に手を伸ばす。
「おいおい馬鹿とは聞き捨て……だが、その飯はいただく!」
遅れて永倉も総司の正面にやってくると、残った白飯を自分の茶碗にさっと移していった。
「いいなあ…」
「どうぞ。僕はお酒をチビチビしてればいいし……。弥生ちゃんはそんなに食べたいなら食べれば?」
「!いいのか?」
「うん、どうぞ。…千鶴ちゃんも、ただ飯とか気にしないで、お腹いっぱい食べるんだよ」
ああ、総司が神に見えるぞ。私は見掛けに依らず大食いだからな。
「……わ、わかってます。少しは気にします!」
「気にしたら負けだ。自分の飯は自分で守れ」
「一の云う通りだぞ。よく食べて大きくなるんだな」
「は、はい!」
千鶴の視線が一瞬、こちらに向けられた。だが、誰だか分からない、といった感じだった。
…忘れてしまっているのか?
いや、何年も会っていないのだから当然か。
