第3章 幹部と共にする夕餉
「一」
「何だ」
急に話し掛けてきた私を訝しげな目で見てくる一。
「いや、嫌な予感しかせぬのでな。少しばかり借りるぞ」
「なっ!?」
云い終えると、平助が喋りだす前に後ろから一に抱き着く形で…彼が常に巻いている襟巻を拝借した。
そしてそのまま、自分の耳元に当てた。
「…いつまでそうしているつもりだ」
「ん?…終わったのか」
平助が左之に殴り飛ばされる一部始終を見届けてから数分後、彼のその言葉に…借りていた襟巻を元に戻そうと、また後ろから抱き着く形となった。
「……」
「…よし。ありがとうな、一」
「……あぁ」
一にそう告げると、自分の座していた場に戻り…残りのものを食べ進めた。
・
(その後の会話)
「一君…」
「何だ、総司」
「顔赤いよ?」
「なっ!?」
そんな彼を見て、総司は溜め息を吐きたくなった。
…否、吐いた。
「……はあ、全く。そういう所は初心なんだから…」
「…総司…」
「なに、一君」
一が消え入りそうな程小さな声で総司に訊ねる。
「…………榊は、女子なのか?」
その問いに、総司は半ば呆れたように返した。
「そうだけど…やっぱり気付いてなかったんだね、一君。多分…平助も気付いてないと思うけどね」
「っ~~!」
今までの事が鮮明に蘇り、一はさらに顔を赤くさせたとか。