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鏡花水月<薄桜鬼>

第3章 幹部と共にする夕餉


時の流れは早く、今はもう夜。詳しくいうなれば、夕餉の時間帯である。

「…お主は原田左之助、お主は永倉新八。お主は…」

黄色い衣服を纏った少年を見ながら、記憶を辿っていく。

「ああ!思い出したぞ!藤堂平助であろう?」

「おお!当たり!」

「しっかし、すげえなあ!俺たちの名をちゃんと覚えてられるなんてよお」

「だな。…まあ、弥生は平助より頭が良いってことだ」

「なっ!?ひでーよ左之さん!」

「ふっ、仲が良いのだな」

今夜の夕餉は、土方が留守なのをいいものとして、私が此処で食べる事を許すらしい。

「?そういえば、総司と一がおらぬな」

「あぁ、彼奴らはお前と同じ日に此処へ連れてこられた雪村千鶴の監視だ」

「…雪村…か」

左之助の言葉に、懐かしさを覚えた。

──東国で一番大きな一族、雪村家。

数年前に滅びたと聴くが…調べた所、生き残りはいるという。我が一族からの情報なので、確かだ。

雪村千鶴。

お主は覚えておるだろうか…私の事を。

「?」

「どうした?」

「…いや」

平助が二人を呼びに行く中、一つだけ曖昧な点を見付けた。

代々、鬼の一族にはその家の当主が一人おって、千鶴はその後、貴重な純血の女鬼として新たな当主となる筈だった。

……一族が滅びていなければ。


──南雲薫。

奴は、千鶴の双子の兄だ。確か、幼い頃に南雲家に引き取られたことにより姓が異なっている。

…そこで、彼が酷い仕打ちを受けたことも聴いている。

問題は、千鶴がそれを知っているかどうか。






…いや、知らないのだろうな。

「やっと来たか!」

「お前ら遅えんだよ。この俺の腹の高鳴り、どうしてくれるんだ?」

「すいません、私のせいで……」










彼女の眼を見れば、それが十分過ぎる程に伝わってきたのだから。

あまりにも真っ直ぐな、その眼を。
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