第2章 新選組
総司が半ば無理矢理一を外へ追いやった後、こんな事を口にした。
「…弥生ちゃんは、もっと後先考えて行動しないと駄目だからね」
「……」
困った。まさか、彼にまでそれを云われる日が来ようとは、想像もしていなかったのだから。
「……一君はさ、」
総司が切り出す。
「多分、君が女の子だって気付いてないよ」
「え……」
これは、喜ぶべきなのか。それとも、哀しむべきなのか。どちらにしても微妙だ。
「そうか。私にはそんなに色気が無いのだな…」
「⁉あ、いや、そういう事じゃないんだけどね…
むしろありすぎるっていうか…」
「ありすぎる?具体的にいうと何処にだ?」
「何処にって…」総司は私の頭の先から爪先まで見渡して、言った。「……全部」と。
「全部…か」
改めて、自分で自分の体を見回す。……が、今一つ理解は出来なかった。
「っあはは!…そういうのは自分じゃ分からないと思うよ」
「む?何故に笑う?」
腹を抱えながら急に笑い出した総司に、私は訳が分からなくなり、困惑する。
けれど、そんな総司を見て思った事があった。
「君、やっぱり面白いね」
総司の笑顔は、例えるなら其処らにいる無邪気な童の様で……
とても、人を斬れる様な者には見えなかった。
「私の何処が面白いというのだ?」
──が、時折見せる…獣の様な鋭い瞳が、人を斬る時の眼なのであろうな。
『人間など、我等鬼を従わせようとする…
ただの哀れな者達だ』
「…ふっ」
「何でそっちも笑うのさ」
ならば私は、見定めようではないか。
『人間と鬼?分かり合える訳が無かろう』
「…いや、古き友人の事を思い出してね」
「友人?誰?…まさか、男?」
「あぁ、男だ。
──西の鬼の一族頭領・風間千景」
人間が、我等鬼と分かり合えるか否か。
…
む?情報が漏洩していると?
気にするな…そうなろうと奴が困るだけであろう?私が困ることなど一切無いのだからな。
奴がどうなろうと、知ったことか。