die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第1章 episode.1
あの、見下ろされた時の眼鏡の奥の冷たい瞳…あまり優しい人だとは思えないけれど、助けてくれたのは事実だよね。
「あとで、お礼を言おう」
私がそう言うと、
「うん」
とユイは笑った。
可愛い子だな…。
事態はまだよく掴めていない。
よく覚えていない、と言うのはさっきの出来事の事…もそうだけど、ここに居る自分自身の事…。
突然この状況に放り込まれたような気分でいるのだけれど、目の前のユイは姉としての私を知っているようで疑う様子もない。
何かを思い出そうとすると、もやが掛かってくる感じ。
はっきりと見えなくて、考えるのを止めたくなる。
今ここで私が取り乱しても、どうにもならないだろうし、この状況からして事を荒立てない方が安全な様な気がして、私は暫く周りの様子を見ながら自分を取り戻そうと思った。
記憶に関しては、誰にも悟られないようにしとこう。