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die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】

第25章 episode.25


ー数日前ー


レイジに頼まれ様子を見ていたマイがうわ言を言っているのを聞いて、思わずお袋の事と重ねてしまった。


お袋の場合、あいつが原因だった。


あいつ、そう、クソ親父だ。


ついこの前までそんな素振りも無かった奴が、突然様子がおかしくなるなんて変だろ。
まさかあいつが関わってるんじゃないのか。


何かわかるんじゃねぇかと、とりあえず勢いで魔界に来たのはいいものの、すぐにはあいつに会えなかった。


勿体ぶりやがって…!


数日待たされた挙句、ようやく問い詰める事が出来たがあいつの答えはこうだった。


『山に行け』


訳が分からなかったがそれだけ言い残して消えちまいやがった。


仕方なく魔界の山へ向かった俺は、複数の獣の群れの中にこいつを見つけた。



「そんな事が…」


俺の話を黙って聞いてそう呟くように言った。


小さな肩が心細そうにも見えるが、屋敷でうなされていた時より随分と顔色は良いように見える。


初めは偶然かと思ってたが、事情を聞いていくうちに何となく分かってきたが…。


結局、あのクソ親父に都合良く仕向けられただけじゃねぇのか…?


かすかな風がこいつの髪を揺らした隙間に首筋の噛み跡が見え隠れする。
思わず目を逸らした。


クソッ。そういや、しばらく何も食ってねぇ。
腹減ってきやがった。


「スバルくんのお母さんって…」


そう、こいつが言いかけた時だった。


「シッ!静かにしろ」


かすかに気配を感じる。
魔界の獣のものだ。
さっきの奴らか?


こいつの匂いに誘われて集まってきてるのかもしれねぇ。


そうだ、こんないい匂いさせてちゃ、寄ってくるに決まってる。
レイジの奴はまだ追って来ねえのか。


「ん!んんんん!」


「あ、悪りぃ。
大丈夫か」


とっさにこいつの口を押さえた手をどけた。


「う、うん、大丈夫。
ごめんね苦しくてつい…。
魔物、居るの…?」


「ああ、多分、複数居るぜ。
お前、どうする?」


「ど、どうしよう…」


「ここで待つのはどっちにしても危険すぎる。
動いてた方がまだマシだと思うぜ。
行くか?目的地に」


「そ、そっか、うん、その方が…いいよね?
そうする」


まるで、誰かに問いかけるようにそう答えた。
そうと決まれば行くしかねぇ。
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