die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第6章 episode.6
「…飼いませんよ」
頭上から声が降ってくる。
「え、いえ…そんなつもりは」
まだ何も言っていないのに釘を刺された。
居候の身だからそんな事を言うつもりはなかったのだけど…。
抱きかかえて立ち上がっても大人しくしている。
「本当に可愛い…」
動物はいつ見ても癒されるなぁ。
思わず笑顔になっていると、腕の中の小さな手が伸びている事に気付く。
「あれ、この子レイジさんの方に行きたがってますよ。
抱っこして欲しいみたいです」
「…いえ、私は…」
私の腕を蹴って来るので差し出すとピョンとジャンプして飛び移って行って、仕方なく受け止めるレイジさん。
「ふふ、良かったね」
レイジさんの腕の中に収まり目を細めるとペロペロと顔を舐めた。
「あぁ、もう。
だから嫌だったのです…」
「あはは、本当にすごく懐いてますね」
動物に懐かれやすいのかな?
「…貴女…」
一瞬、いつもと違う目をしたレイジさんの視線が私の腕あたりをとらえると、猫はニャッと声を上げ地面に降り、どこかへと走って行った。
「あ…また来てくれるかなあの子」