die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第5章 episode.5
「ちょ、ちょっと待って下さい…。
状況が飲み込めません」
空白の時間が怖くなって自分の腕を抱くと、まだ感覚が少し麻痺している事に気付く。
「こんな、薬なんて…。
何も聞かされないまま、こちらからは情報を得ようって言うんですか?
酷いです…」
レイジさんからは度々助けられていたし、信頼していた分、悲しくなってくる。
この家では、やっぱり私の立場は孤独なんだ。
不安、恐怖、口惜しさ…ここへ来てからの色んな出来事も思い出されて色々な感情が一気に押し寄せてくるけれど、ここで泣くのは悔しい。
泣いちゃ駄目だと我慢したのだけれど、抑えきれなかった感情が視界をぼやけさせる。
こんなところ、見られたくないよ。
「貴女だって、ここへ来た理由が他にあるなら、知りたいでしょう」
「それは…。
知りたいです…けど…」
レイジさんは間違った事を言っている訳じゃないのかもしれない。
だけど…。
「でしたら、協力してくださいよ」
レイジさんはベッドのそばに来て座ると、こちらに手を伸ばしてきた。