die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第5章 episode.5
涙をふいていた私の手首を掴んで顔からはがし、思わず身構えた私の涙をぬぐってくれる。
「っ!…」
突然の優しいしぐさに心臓がうるさく高鳴る。
手はそのまま私の頬に添えられたまま、見つめる瞳から目が離せないでいる。
こんな、近くで見つめられたら静かな部屋に自分の心音が聞こえてしまいそう。
「あ、あの…」
少し離れようとした瞬間、レイジさんの手が髪に触れてそのまま抱き締められた。
「ひゃっ…!」
「そんなに泣かないでくださいよ…」
いつもよりすごく近くから聞こえる声に、また心音が大きくなった。
髪をなでてくれて…慰めてくれてる?
心臓が相変わらずうるさく叩いてくる。
「これは、お互いの為だと思うのです」
「そ、それは…」
「貴女ひとりではどうしようもないでしょう?」
「………」
悔しいけれど確かにそうかもしれない。
私に何が出来るって言うのだろう。
「協力してくれますね?」
「…はい…」
耳元で囁かれて、もう答えはひとつしか見当たらなかった。