die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第5章 episode.5
上品な香りが鼻腔を抜けて、丁度良い温度で喉を通っていく。
今まで飲んだ紅茶の中で一番美味しかった。
「そうですか」
少しレイジさんが微笑んだように見えた。
普段の冷たい目線と相反していて、調子が狂う。
紅茶をもう一口口にしてから落ち着きを取り戻す。
「えと…その理由って、仮説みたいなものがあったりするんでしょうか?」
「いくつかありますね」
「それは…どんな…」
話をしているのに、なんだか急にまぶたが重くなってきた。
座っているソファに吸い込まれるように力が抜けていく…。
おかしいな…。
どうして…?
気持ちとは反対にどれだけ頑張ろうとしても抵抗出来ない。
レイジさんの姿がぼやけて、やがて暗闇になった。
「でもまずは…貴女の話を聞かせて貰いますよ…」