die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第1章 episode.1
「はぁ…。全く、アヤトは…」
そう呟くと視線を落とし、こちらを見下ろす。
眼鏡の奥の鋭い目と視線がぶつかり、胸の奥がどきりとする。
「貴女方、どうしてうちに?いつまでそうして寝ているのです」
私に、言ってるんだよね…?
「うごけ…ないん…です…」
絞り出すように声を出すと、女の子が駆け寄ってくる。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
この子は誰なのだろう?
心配そうな目で見てくれている…。
「やれやれ、仕方ないですね…」
男性はため息まじりにそう言うと、
横たえている私の身体に触れる。
戸惑いを感じた次の瞬間には私の身体は地面から離れた。
抱き抱えてくれてる…?
すぐ近くに男性の顔がある。
とても端正な顔立ちだと、ぼうっとした頭でもよく分かる。
綺麗だななんて呑気に感心している。
「私に運んで貰えるなんて感謝しなさい。いつまでもここで寝転がられていては、その方が面倒なだけです」
そう、彼が言う声を聞きながら、意識を手放した。