die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第25章 episode.25
何で魔界のこんなところにお前が独りで居るんだ、と詰め寄るスバルくんに、レイジさんと魔界に来た事、さっきまで一緒だったけど魔物に襲われてしまった事をを話した。
「…で、怪我したあいつがまだ来ないって訳か」
話を聞いてくれたスバルくんは少し神妙にそんな風に呟いた。
「う、うん…。
レイジさん、大丈夫かな」
心細さのままに、そう聞いてしまった。
「オレが知る訳ねぇだろ」
「そうだよね、ごめん」
スバルくんの言う事もごもっともだよね。
落とした視線の先には木々から落ちた葉が折り重なってる。
整備などはされていない自然のままって感じだ。
この辺にはとてもじゃないけどスノードロップは無さそう。
「…ま、ヴァンパイアは簡単に死なねぇからな。
お前が死にさえしなけりゃ、いつかは会えんじゃねえの」
スバルくんなりの慰めなのかな。
私の言葉を聞く事なく続けた。
「てか、レイジがお前を魔界に連れて来たのは分かった。
でも何だってこんな真っ暗で何も無い、獣が居るような山奥に来てんだ?」
「えと…」
私はしばし言葉に詰まった。
「あいつの事だから、変な研究の材料でも探してんじゃねぇの?
そうじゃなきゃ、こんなとこに来る理由がねぇだろ」
「う、うん、必要な植物がある…、とかで…」
「やっぱそうなのか?
んな事、自分ですれば済む事だろ。
なんでわざわざお前を巻き込んでんだ」
スバルくんは、私がヴァンパイアハンターの娘だって事も、覚醒の事も知らない筈…。
「あの…レイジさんは私の為に…」
「あ?」
「わ、私の病気をね、治す為に薬を作ってくれようとしてるの、それで」
スバルくんは真っ直ぐ私を見ていた。
完全な嘘ではないけど本当の事を言わないのは胸が痛む。
だけど…今全てを話しても良いものとは思えなかった。
「ふぅん。
よく分かんねえ。
それだって別にあいつがひとりで来りゃ済む話だろ」
「う、うん…。
私が無理言って連れてきて貰ったの。
自分の事だから、全部お任せしてしまうのは悪いかなって…」
「それじゃ、その病気ってやつが…
お前が死にたがってた理由か?」
心臓がぎくりと大きく鳴った。