die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第25章 episode.25
「レイジさん…?えっ…」
みるみるスピードが落ちていく。
レイジさんはポケットに潜ませていた石を魔物へ向かって投げた。
石は鼻や眼に命中し魔物は手を使い顔を擦ってる。
さっきも、こうして魔物を怯ませたんだ。
その間にレイジさんは私をそっと川岸へ下ろしてくれた。
魔物が切れた蔦の端に噛みつき一瞬の隙をついて牙を向けた先がレイジさんの脚だったようだ。
片脚から血を流すレイジさんを見て言葉を失ってしまった。
「レイジさん…!大丈夫なんですか?!」
「お、大袈裟ですよ…。ちょっと、かすったくらいです」
とてもそうは見えないよ。それとも、かすったくらいでもこんなに血が出ちゃうくらい魔物の牙が鋭いって事なの?
「参りましたね…これでは貴女を抱えてある程度の時間飛行する事ができません」
「レイジさん、手当てしないと」
そう言った時、魔物が私の背後に近づいて来ていた。
はっとして振り返ると、何匹ものコウモリが魔物の目を狙って飛び掛かっていた。
見れば、遠くの空からまだ沢山飛んでくるのが見える。
魔物は飛び回るコウモリに気を取られてる。
「今はここで悠長に私の手当てをしている場合ではありません。使い魔が時間を稼げるのもわずか。今のうちに貴女は先に逃げて下さい」
私は耳を疑った。
「そんな…」
「不安な顔をしないで下さい。時間が有りません。よく聞いて下さい。この先の林の中、そこには今のところ魔物の気配はありません。私は必ずすぐに追いかけますから、そちらに身を潜めていて下さい」
私の不安は、レイジさんの怪我もあるけど、それ以上に暗い森の中一人で身を守れるのか自信がなかった。
そうだ、私の血を吸えば傷も回復するんじゃないのかな。
「お願いです。とにかく今は貴女が、安全な場所へ行ってくれる事が私の安心に繋がります。傷の回復…吸血は、身の安全が確保出来てからです。いいですね」
まるで、心の中を読まれているようなレイジさんの言葉に、私は頷くしかなかった。
使い魔が少しずつ払い除けられ次々と倒れてる。
急がなくちゃ。
離れたくは無い。
思いとは裏腹に私は、レイジさんから離れて、その場から退いた。