第25章 episode.25

「ほら、届きますか？
首に腕をかけて」


「で、でも…？」


レイジさんは私の目の前で腕を広げてる。


首に掴まるって…抱き着くのと変わらないよ…！


自分から抱き着くなんて恥ずかしい…。


それでも、言われた通りレイジさんの首におそるおそる腕を伸ばした。


少し届きやすいようにしてくれたから、掴まる事が出来た。


「しっかり掴まっているように」


「っ！キャ！」


レイジさんは言いながら私の膝の裏に腕を通し、横向きに抱いた。


え…もしかして、歩いて渡るつもりなのかな？


「で、でもこれじゃあレイジさんが…」


濡れてしまう。


「飛んで川を越えますから、暴れないでくださいね」


「へっ…？
と、飛ぶ…？」


ヴァンパイアはそんなにジャンプ力があるものなの？


よく分からないままでいると、ふわっと浮上した感覚があった。


「えっ？…えっ？」


飛ぶ、と言うのは、ジャンプと言うより浮いている感じだった。


スッと浮いた後、川の上を音も立てずゆっくりと移動した。


あっという間に向こう岸に着くと、トン、と地に足が着いた。


「すごい！本当に浮いて…！
濡れてないです！」


空を飛んだのなんて初めてだったから、私は興奮していた。


「わぁぁ〜すごいですね、レイジさん！」


「ちょ、そんなに喜ぶとは思わなかったのですが…。
ヴァンパイアなら誰でも出来る事ですよ」


レイジさんは少し面食らったような顔をしながら教えてくれた。


「そうだったんですか…！」


私が感心していると、呆れたような笑みを浮かべながら、軽くため息をついた。