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die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】

第25章 episode.25


「どうやら、抜けられたようですね」


「え…?」


その後しばらく歩き続けていると、そう言って私の手を引き、景色を見せてくれた。


レイジさんの背中で隠れていた視界が、一気に広がる。


「わぁ…!」


柔らかい月明かりのような明るさだけど、これまで通って来た暗さと比べると明るく感じた。


視界を川が横切っている。


ちょうど、その先は滝になっているみたい。
それで、水の音がしていたんだ。


「ひとまずは、これで安心です。
あとは川を辿って登ればいい。
その前に、少し、休憩しますか?」


レイジさんは川の近くまで歩いて、私に座るように勧めてくれた。


自分は川の水を調べているみたいだ。


川のそばまで行って、手で水をすくったりしている。


こんな風にひらけた場所だと、いいところに思えてきて、ふと空を見上げた。


人間界の太陽が恋しくない訳じゃない。


でも、やっぱり魔界のこの空も、嫌いじゃないと思えた。


「どうしました?
疲れましたか」


レイジさんは私の座っている岩に近寄り、尋ねた。


「あ、いえ…やっぱり、魔界の空も嫌いじゃないなって思って」


「空?
…ふ、相変わらず貴女は変わった人間ですね」


きっと、レイジさんと居るからだよ。


自分の中では明確にそう感じていた。


「ふふ…」


辺りを見回すと、滝の音以外何も聞こえなくて、この世界にはレイジさんと私ふたりだけなんじゃないか、そんな気さえしてしまうほど静かで、誰も居ない空気を感じた。
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