die Phasen des Mondes【ディアラヴァ】
第25章 episode.25
「そんなに頬をふくらませて、ほら」
レイジさんは立ち止まるとこちらに手を伸ばした。
思わず目を閉じたら、私の頬に指がふに、と触れた。
「笑いなさい」
目を開けるとレイジさんはこちらを見ていて…暗くてよく見えないけど、優しい顔をしているように思えた。
つられて少し口元が緩む。
「そうです。
貴女は笑っていなさい」
何だか…触れてる手から優しさが伝わる気がして、さっきまでの緊張感がほぐれた。
私は、いつのまにかすっかり気が紛れていた事に気付いた。
その時、ちゅ、と音を立てて唇が頰に触れた。
「っ!」
こ、こんなところで不意打ち?!
暗いから瞬時な動きにはすぐ対応出来ない。
慌てている私をよそに、レイジさんが告げた。
「だいぶ近づいているはずですよ。
音が少し大きくなりました。
貴女も聞こえるのではないですか」
「…あ…確かに…」
耳を澄ますと、ほんの少し、ザーと川の流れる音がする。